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自分のことを自分で決めるための意思決定支援<誰もが自分らしく暮らせる権利を守るために>

2025.03.10 掲載

「意思決定支援」という言葉をご存知ですか?
 何を食べようかな、どの服を着ようかな、私たちは日常のさまざまな場面において自分自身で意思を決定しています。しかし、認知症や障害等により一人で自分の意思を決定することが難しい人は、日常生活で自身の思いや意思を反映できない場合があります。
 意思決定支援とは、そうした人たちが自分で自分のことを決め、その思いや意思を伝えられるよう支援することです。
 今回は、安芸郡府中町にある就労継続支援B型事業所WINDえのみや(以下、えのみや)における意思決定支援の取り組みについて、管理者の横山 朋子(よこやま ともこ )さんにお話を伺いました。

写真:就労継続支援B型事業所WINDえのみや   管理者 横山 朋子さん

 本人を中心に信頼関係を築きながら行う支援

日々の就労支援における意思決定支援

 えのみやは、精神障害者や知的障害者等を対象にパンの製造やオリジナル商品の作成・販売等を通じて、就労や生産活動の機会を提供する日中活動の場として、平成24年に事業を開始しました。
 えのみやの1日は、当日の作業内容を利用者自身が決めることから始まります。例えばパンの製造では、材料を計る、こねる、焼くなどの工程がメニュー化されており、利用者は希望する作業を自分で選択します。
 自分で決められない利用者には、作業内容を丁寧に説明します。それでも難しい場合は、当日の体調等もみながら本人の好きなこと、得意なことが活かせる作業を職員がいくつかピックアップして提案し、その中から選択してもらいます。
 利用者自身が決められるよう支援する際に大切なことは、常に本人を中心に考える、ということです。
 自分で決めることが難しい利用者に職員の考えを押しつけたり説得するのではなく、「決められないのはなぜかな?」「本人の思いはどこにあり、どうすればその思いが叶えられるかな?」と、利用者の視点で考えることが必要です。
 自分の意思をうまく伝えられない利用者の場合は、表情や動作から本人の思いを汲み取っていきます。
 また、選択して決めるときに利用者が焦らないよう、利用者それぞれのペースに合わせて支援します。
 こうした意思決定支援を行うには、日頃から利用者とコミュニケーションをとり、本人の好きなことや嫌いなこと、得手不得手、どうしても譲れないこと等、本人の日常を知ることがとても大切です。
 そうした日々の積み重ねが利用者と支援者の信頼関係につながり、築かれた信頼関係は、本人にとって重要な決定をする際の意思決定支援に活かせます。

写真:今日の気分は計量作業

写真:体調を見ながら別作業

本人にとって重要なことを決定する際の支援

 就職や親からの自立、施設入所など、本人にとって重要なことを決定する場面での意思決定支援は、決めるまでのプロセスがとても重要になります。
 特に家族の入院等、本人が予期せぬタイミングで意思決定を迫られた場合は、その状況を本人が受け入れているかをまず確認します。そのうえで、今後、本人の生活がどのように変化するかを一緒にイメージしていきながら、自分でできること、できないことを整理して本人に認識してもらいます。
 家族の入院により独りの生活になる場合は、食事や洗濯といった日常生活だけでなく、本人がしたことのないお金の管理等、想定される生活の場面を具体的に挙げて説明し、必要な情報等も提供しながら、自分でできそうなこと、誰かの力を借りたいことを決めていきます。
 こうしたプロセスを丁寧に踏んで本人が決めたことであれば、たとえその結果が本人の思いとは違ったとしても、本人は納得することができます。

写真:大切な仲間「えのみや」の利用者さんと(前列中央 横山さん)

地域に暮らす一人ひとりができること 

 日々の支援において常に根底においていることは、地域で暮らす全ての人に人権があり、それぞれが自分の考え方(意思)を持っているということです。
 意思決定支援という言葉は、なじみがないかもしれませんが、誰もがどんな状況におかれても自分らしく暮らすために必要な支援です。
 意思決定支援は特別なことではなく、まず身近な人を受け入れることから始まります。身近な人の好きなもの、嫌いなもの等を知ることや、何気ない会話の中でつぶやかれたその望み等を知っておくと、本人の判断能力が低下して意思決定支援が必要になったとき、本人に代わってその情報を伝えることができます。たとえ本人の望みを100%叶えることができないとしても、本人の意向に沿った可能な限りの支援につながります。
 まずは、皆さんの身近な人とお互いを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

自分らしく暮らすための権利を守る

 今回は就労支援事業所での意思決定支援について紹介しましたが、横山さんのメッセージにあるように、意思決定支援はだれもが必要になる支援です。
 だれもが自分で自身の意思を決定し、思いを伝え、自分らしく暮らしていくための権利を持ち、その権利は守られる必要があります。
 しかし、認知症や障害等により自分の意思を一人で決めたり伝えたりすることが難しくなると、家族や周りの支援者が本人に代わって決めることもあります。本人のためを思って決めたことでも、本人が本当に望む思いと異なっていたら、それは「自分の意思で決める権利」が守られていないことになります。
 そうならないために、日頃から家族や地域の人たちとつながり、お互いを知ることが大切だと教えていただきました。
 本会は、だれもが自分の意思で自分らしく暮らせる権利を守れるよう、福祉関係者や地域住民の皆さんと一緒に、それぞれの立場でできる権利擁護支援のより良い進め方について考え、取り組んでいきたいと思います。

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