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コロナ特例貸付後の市町社協におけるフォローアップ支援の取り組み

2025.01.10 掲載

 令和2年3月から令和4年9月までの約2年半、国の経済対策により「コロナ特例貸付(生活福祉資金)」が行われました。全社協による集計では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、休業や失業等で減収した生活困窮世帯への貸付は、全国で1兆4,431億円を越え、広島県においても約114億円の貸付が行われました。現在は償還(返済)期間中ですが、多くの世帯が、依然として生活が安定せず返済が難しい状況にあります。また、滞納が続き、全く連絡が取れない人が、償還中の約3割を占めています。
 市町社協の窓口では、借り受けた人の生活状況を聞き取りながら、必要に応じて償還猶予や償還免除等の手続き支援や、生活課題をみいだし、関係機関等と連携したフォローアップ支援に取り組んでいます。 
 今回は、広島市社会福祉協議会安佐南区事務所(以下、安佐南区社協)の担当者である、西村主事に話を伺いました。

県内および安佐南区社協のコロナ特例貸付の件数について

貸付件数(令和4年10月末時点)

広島県内全体

38,971件

広島市全体

20,391件

安佐南区

1,061件

 

 県内の貸付件数の約半数が広島市にあり、安佐南区社協の貸付件数は中区、西区に続き、3番目の多さとなっています。安佐南区社協では職員が2人体制で対応しています。

西村主事のプロフィール

 ビルメンテナンス関連の仕事をする中で、空き家の管理やトラブル、クレーム対応に携わる中、福祉に関心を持ったことから、アルバイトをしながら専門学校に通い、社会福祉士の国家資格を取得後、広島市社会福祉協議会へ就職。安佐南区事務所へ配属され、3年目を迎えます。

画像:相談対応中の西村主事

画像:相談対応中の西村主事

フォローアップ支援の主な業務内容について

 借り受けた人からの電話や来館による相談に応じています。具体的には、償還方法や償還猶予、償還免除の申請等の手続き支援や、償還がすすみにくい原因や生活課題を本人と一緒に整理し、関係機関と必要に応じて連携しながら、課題解決に向けて対応しています。また、貸付後、未応答の人へは、電話やメール、手紙の送付、自宅訪問などさまざまな手段で連絡を取り、状況を把握しています。毎日5件から15件、他の業務と並行しながら対応しています。

借り受けた人にアプローチする際に大切にしていること

連絡が取りづらい人への配慮

 借り受けた人へは、まず電話で連絡を取りますが、日中仕事をされている人も多く、電話がつながらない場合や、電話番号が変更されている場合は、手紙を送付します。令和6年12月に最終償還期限到来を迎えるコロナ特例貸付の緊急小口資金は、令和6年12月末で償還猶予申請が終了するため、緊急性を含みつつ、複雑な償還方法をわかりやすく伝える表現を心がけることで、以前よりも多くの問い合わせに繋がりました。また、問い合わせ専用フォームを作成して各種案内文に掲載することで、これまで日中、連絡がつかなかった人にも連絡が取れるようになりました。

直接会って話す面談での聴き取りを大切に

 償還が難しい場合は、償還猶予や償還免除等の手続きをすすめる面談を実施し、直接会って生活状況の聴き取りを行います。その際には、自分の思い込みで相手を判断し、決めつけることのないよう傾聴し、信頼関係を構築しながら困りごとを把握しています。
 初期面談時には暴言が続いた人ともじっくり向き合うことで、半年後には笑いながら話せるまでの関係を築いた経験から、相手との距離感が変わっていくことを学びました。

フォローアップ支援で苦労していること

借り受けた人と繋がる難しさ

 借り受けた人の多くは、このコロナ特例貸付の負債だけでなく、他の金融機関への債務や、税金・保険の滞納を抱えています。金融機関や税金の滞納には、免除や猶予が難しいことを経験しており、生活が苦しくても、コロナ特例貸付の返済について社協に相談しても無駄だという先入観を持たれています。その先入観を変えていくには借り受けた人と繋がることが必要ですが、人によっては繋がることを拒否し、消極的になっているため、関わりが難しいと感じています。

自営業者への支援の限界

 借り受けた人の中には、コロナを経て経営が厳しく生活が安定しない状況でも、自営業の継続を希望される人が多い状況にあります。社協職員として自営業者に事業支援・提案をすることには限界があり、自営業者の支援には、多くの関係機関と繋がる必要性を感じています。

高齢層への支援の難しさ

 電話や手紙だけで、自ら手続きを進めることが難しい高齢者が多いと感じています。また、年金だけでは生活が成り立たないため、借り受けた人の8割近くが就労し、わずかな収入からなんとか返済しようとする人も多数います。借りたお金を返すことで、返済後の生活が心配になるケースも少なくありません。返済と生活維持のバランスを考えながら支援する必要があると感じています。

局内連携の構築

 借り受けた人への支援の限界や、関係を築くことに悩む職員もいます。借り受けた人と関係を築くには、根気強く相手の話を聞く姿勢など、コミュニケーションが重要ですが、多用な業務の中で時間が確保しづらく、借り受けた人への対応を、職員同士で共有し、検討する機会を設けることが難しいと感じています。

フォローアップ支援のやりがい

 国は、フォローアップ支援期間を目安として令和4年度から10年と定めていますが、できれば私自身も10年間、借り受けた人への支援に携わりたいと考えています。難しさも多い中で、借り受けた人と関わりを重ねるごとに反応があり、借り受けた人との小さなエピソードの積み重ねが、私自身の仕事へのやりがいに繋がっています。
 例えば、「社協さんのためにもがんばって返そうかな。最近はこんなことがあったよ」など、借り受けた人自身から近況報告を受けたり、気持ちに浮き沈みがあり1つの仕事が長く続かない人に、生活困窮者自立相談支援機関と一緒に面談をして仕事を見つけることができたケースなど、支援開始当時は想像していなかった経験もできています。
 社協が行う生活福祉資金は、単に貸して返済するだけではなく、相談支援を軸とした自立支援を行うことに意義があります。コロナ特例貸付の施策に対して疑問視する意見もありますが、私たち社協職員が、コロナ特例貸付を通じて、今までは気づけなかった、生活に課題のある人を見つけることができた事実にとても意義があると思います。

今後の取り組みについて

 送付した手紙に借り受けた人が反応してくれ、繋がったのは良かったのですが、今後はさらに多様な問い合わせに対応できる工夫が必要だと思っています。就業されている人向けに、仕事終了後の遅い時間帯や週末の休みの日の相談対応、若年層には、インターネットを活用した、オリジナルの問合せフォームの作成も検討したいです。高齢世帯には、往復はがきや紙ベースのアンケートなども有効ではないかと思います。その他、インスタグラムの開設など借り受けた人と繋がるための方法やアプローチ方法を悩みながら模索しています。また、個人的な考えですが、生活困窮者自立支援担当者と連携して「よろず相談会」を開催し、借り受けた人が相談しやすい機会を提供することも検討していきたいです。

 

 今回は、安佐南区社協の取り組みを紹介しましたが、県内の全市町社協では、様々な地域の実情に応じたフォローアップ支援がすすんでいます。コロナ特例貸付は、迅速な貸付を求められたことから、貸し付け時に本人の具体的な生活状況の把握がほとんどできていませんでしたが、市町社協のていねいなアプローチにより、現在、借り受けた人の生活実態が少しずつ見えてきました。市町社協では無理に償還を促すわけではなく、生活状況を聞き取り、生活再建に向けた支援を行なっています。
 フォローアップ支援は、償還を終えることで借り受けた人との関係が終了するのではなく、償還をきっかけとして生活再建まで寄り添う支援です。本会は、今後も市町社協の取り組みをみえる化し、特例貸付を通じた生活支援の事例を発信していきます。

お問合せ先

生活支援課

所在地:〒732-0816 広島市南区比治山本町12-2 県社会福祉会館1階
電話:082-254-3413(貸付担当)
   082-567-4836(償還担当)
ファクス:082-252-2133
受付時間:平日8時30分~17時30分
 ※土日祝日・年末年始(12月29日~1月3日)は、お問合せフォームで受け付けます。
 (返信には数日程度かかります)

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電話:082-254-3411(代表)
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(土日・祝日・年末年始は休業)

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