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社会福祉法人広島修道院における人材育成の取り組み <福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程を活用して>

2024.10.10 掲載

 本会社会福祉研修センター(以下、研修センター)では、社会福祉従事者研修の福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程(以下、キャリアパス研修)を重点研修として掲げ実施しています。毎年継続して活用されている社会福祉法人広島修道院の広島乳児院と児童養護施設広島修道院から、本研修を活用した施設における人材育成の取り組みなどを伺いました。

キャリアパス研修とは

 本研修は全国社会福祉協議会が開発した、高齢や障害、児童など福祉の全分野に共通して求められる能力を習得するための全国共通の基礎研修です。種別・職種を横断した研修で、広島県では、初任者、中堅職員、チームリーダーの3コースを実施しています。前職を含めた福祉職経験が、初任者は3年未満、中堅職員は3年から5年未満、チームリーダーは5年以上としていますが、法人内の実態に合わせて受講されています。
 研修内容は、事前学習ではテキストの要約や活用の視点をまとめることと、プロフィールシートを作成し、福祉職に就いたきっかけや、福祉職員として大切にしたいこと、めざしたいことなど自身の考えを整理し文章化します(自己期待)。
 その後、演習を中心とした対面研修では、テキストの内容の理解だけではなく、他種別・多職種との意見交換から得る多くの気づきや、上司からの受講者のプラス面、強み、期待などを知ることで、施設・事業所の思い(他者期待)も取り入れながら、次のステップへ進むためのキャリアデザイン(キャリアの道筋)を作成し、研修後の主体的な実践を促します。

<福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程テキストから>
 キャリアパス研修は、福祉職員が自らの歩んできた道を振り返り、また、新たな知識や体験を通して、自らの将来像を描き、職業人生の意味を深め、その価値を高めることをねらいとしています。そのことが自らが働き続けることの力となり、ひいては、福祉人材の確保・定着や利用者サービスの向上につながります。

キャリアパス研修受講者の声

広島乳児院 岡田 理歩 児童指導員

(平成30年度初任者コース広島会場、令和4年度中堅職員コースオンラインコース受講)

 職場からの推薦で受講しました。分野が違っても共通の話題があったので、初任者の時も中堅職員の時も違う視点からの意見を聞くことができて勉強になりました。
 中堅職員コースの時はオンラインでの受講だったので、グループワークの内容のみの話となり会場に行って生の声を聞いて、もっと直接話したかったと感じたことを覚えています。初任者コースの時は年齢が離れた人もいましたが、話しやすい雰囲気で、積極的に意見が出ていたので、私も発言しようと思うことができました。仕事の悩みも、職場を離れているので、いろいろなことを話しやすい雰囲気でした。
 中堅職員コースでは、周りの人に感謝しながら仕事をすることの必要性など大切なことに気づくことができるので、受講を迷っている人にはぜひお勧めします。研修受講で現場の人員が欠けるのは大きいですが、その分、学んできたことを持ち帰ってもらって、それを他の職員と共有して現場で活かせるのであればいいと思います。

事前課題について

 テキストの要約や活用の視点のまとめは大変でしたが、対面研修のグループワークで重要だと感じた点や、どのように活用するかを発表した時に、人によって選んだ内容や感じたことが違い、その部分を選んだ理由を聞くと新しい発見があり勉強になりました。

キャリアデザインシートの上司コメントについて

 上司から文章で伝えられることがないので、「中堅職員になることをプレッシャーに思わず、これからも楽しく養育に当たり、スキルアップをめざしてください」のコメントは、上司に支えられていると改めて感じることができてとても嬉しかったです。期待が伝わってきたので、その期待に応えたいと思いました。

研修内で設定した1~3年のアクションプランについて

 初任者の時は「会議など自分の意見を言える場では積極的に発言する」「他職員とコミュニケーションを密に取り、情報の共有に努める」を設定しました。クラス会議では自分の思いを、他の人に合わせることなく言えるようになりました。
 初任者の時のコミュニケーションは、取りやすい人もいましたがベテランの先輩には緊張して話せないこともありました。受講後は思い切ってぶつかってみる気持ちで、自分から多くの職員と話をすることで、人によって違う視点からの問題の捉え方に気づくことや、解決方法について質問する機会が増えました。問題を見つける力や解決に向かうプロセスを、会議などで話し合うことを意識できるようになったと思います。

児童養護施設広島修道院 山根 尚久 児童指導員

(令和5年度チームリーダーコース広島会場受講)

 職場からの推薦で受講しました。入職後4年の時に受講したので、その間自分が担当してきたことや気持ちなど、どのようなキャリアを積んできたかを立ち止まって、振り返ることができました。
 研修でのグループメンバーはベテランの人ばかりで、自分にはない俯瞰的な意見がたくさんあり、とても参考になりました。まだチームリーダーのポジションではないと思っていましたが、受講後はその意識が必要であることや、いずれチームリーダーになる意識づけのために職場から推薦されたのだと感じました。チームリーダーになるまでに意識すべき点を知っておくと、実際になった時に困らずに済むのだと思います。

プロフィールシート・キャリアデザインシートの上司コメントについて

 新人職員の頃は普段からOJTで先輩とかかわる機会がありますが、年数が経過するとこのようなやり取りが形に残りません。求められている役割や、どのような力をつけてほしいかなど具体的なメッセージがあり、よい機会だと思いました。
 「他者期待」とても良い言葉ですよね。自分のやりたいことばかりに思いが強い人もいますが、まず上司が求めているレベルを把握して、そこが一致していないと期待値もわからなくなります。求められているものと自分の資質が合っているのかを、上司と相談しながら決めていければと思います。

研修内で設定した1~3年のアクションプランについて

 「新任職員の立場で物事を考えられるように視点の幅を広げる」「来年度、職員数が減り今までとは働き方が変わるので、変化に対応できるようチームメンバーで乗り越える」を設定しました。チーム養育が要なので、チームが円滑に回ることを意識しています。そのきっかけは、「OJTの対象となる後輩の成長が自身の喜びである」との講師の言葉です。その価値観は研修を受講したからこそ学ぶことができました。子どもの養育に関しても全く同じなので、子どもだけではなく職員に対してもその考えで接すると、チームの良い関係性につながるのだと感じました。

施設における人材育成について

広島乳児院の取り組み 

<話し手>大久保 稔 総主任児童指導員

内部研修について

 新任研修は、最初に施設長が理念や方針などを説明し、4月から2月まで毎月、権利擁護や保育養育などについて主任を中心に実施しています。他に中堅職員を含めた研修として事例検討会や、言語療法の先生から発語を学ぶこと、離乳食や乳幼児の食生活、人形を使った乳幼児の救急救命などをテーマに行っています。乳児院は24時間子どもがいる現場なので、交代ですべての職員が受講できるようにしています。

外部研修について

 以前、外部研修は受講者を施設長などの上司が勤続年数等を考慮し各研修の受講者を決めていました。今年度から年度初めに年間計画を階層別やテーマ別に一覧にして周知し希望者を募ることを行っています。この研修はぜひ受けてみたいと積極的に希望される人も出てきました。コロナウイルス感染症が落ち着いて、研修センターをはじめ、外部研修が多くなってきました。職員体制のこともあり、多くの人に受講してもらうこともできないため、誰にいつ受講してもらうのかなど計画的な人材育成について、一度整理する必要があると思っています。 

児童養護施設広島修道院の取り組み

<話し手>兼光 一之 副院長

内部研修について

 人材育成は、広島国際大学 岡本晴美教授を講師とし、各階層に分かれた内部研修を年4回合計12回実施しています。「人材」の表記は、「財産」の「財」の漢字を使用しています。
 新任職員はOJT、2年目から4年目の職員はコミュニケーションスキルや、仕事の境界線、悪いことではなく良いことに注目するといった基本的な研修をします。中堅層は施設課題を話し合い、その内容を10年目以上のベテラン層が検討し、結果を中堅層に返します。
 基本的な研修で、教えられた人が次は教えるしくみを作りたいと考えています。職員の関係の質をあげることが、養育の質をあげるというコンセプトで実施しています。ねらい通りに実施したいのですが、年4回の実施だけでは、研修内容が定着しているかなど効果測定が課題です。また、階層別研修の目的に所属感や自己効力感をあげていますが、職場の中のロイヤリティ(信頼や愛着)や忠誠心をどう育てていけばよいかも課題です。

外部研修について

 3~4人の職員で組まれたユニットに新任職員が入っていますが、新任職員を支える中堅層が少なく、少し上のベテラン層で構成されているため、施設内の主軸が2、3年目の職員になります。他県出張を伴う全国児童施設協議会主催研修は5~6年目、子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)主催の専門研修は、7年目以上の職員を対象としているため、それまでの2年目には、研修センター主催のOJT推進研修や伝え方研修などの社会的養護処遇改善加算研修を受講してもらい、3年目にはキャリアパス研修中堅職員コースの受講を計画しています。

キャリアパス研修について

 チームリーダーコースを受講した山根さんは、入職後4年目20代で受講しました。入職前は、福祉職以外の仕事を退職後、専門学校で学び社会福祉士の資格を取得しています。チームリーダーには早いかもしれませんが、3交代の勤務では山根さんより若い職員のみの勤務日があり、山根さんの経験があればチームリーダーとしての意識が必要なため受講を勧めました。
 キャリアパス研修は、2日間職場から離れる外部研修になるのでリフレッシュになると考えています。また、過去に受講した先輩職員に続くことになるので、自分もその立場になるから頑張らなくてはという思いが生まれ、モチベーションがあがると思います。

研修センターに期待すること

 中堅職員やチームリーダーの意識は、施設内で育っていくのが良いのですが、施設内だけでは難しいことが多くあります。中堅職員は自身のキャリアや役割を考えることや、問題解決の力が必要ですが、実践レベルに到達していないのが現状なので、研修効果が後追いできれば研修自体が良くなるのではないでしょうか。
 また、児童養護施設は、常に子どもがいるため勤務中に職員が話をする時間があまり取れません。短い時間の中でポイントを話して決めなければいけないため、考え方の違う人といかに折り合いをつけるかが大切になります。そのスキルを習得できるグループワークが多い研修を実施してもらいたいです。
 同じ児童分野だと発想が似ているので、高齢や障害、社協など他分野の発想の違う人、考え方の違う全く知らない人たちと関係を構築しながら、何かを作りあげる研修が理想です。

写真左から岡田児童指導員、大久保総主任児童指導員

山根児童指導員の写真

 

 研修センターでは、今後、施設・事業所の研修に対する要望や、受講者のキャリアデザインの取り組み状況などを後追いすることで、キャリアパス研修が施設・事業所の人材育成だけではなく定着にもつながる働きかけができるよう努めます。

 

お問合せ先

社会福祉研修センター

所在地:〒732-0816 広島市南区比治山本町12-2 県社会福祉会館1階
電話:082-254-3460
ファクス:082-256-2228
受付時間:平日8時30分~17時30分
 ※土日祝日・年末年始(12月29日~1月3日)は、お問合せフォームで受け付けます。
 (返信には数日程度かかります)

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電話:082-254-3411(代表)
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(土日・祝日・年末年始は休業)

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