地域で暮らす安心感を高める社会福祉法人正仁会の地域公益活動
2024.08.09 掲載
社会環境の変化に伴い、特に、既存の制度・サービスでは十分に対応できない人の生活課題や福祉ニーズへの支援が求められています。
こうした中で、社会福祉法人は、制度福祉サービス提供の役割を果たすだけでなく、制度外で地域の求めに応じたさまざまな地域公益的な活動が期待されています。
今回は、地域の暮らしをよりよくするために、社会福祉法人正仁会(しょうじんかい/以下、正仁会)が取り組む「フードバンク事業」と「広島さっそくネット(以下、さっそくネット)」について紹介します。
1.地域や関係機関と協働して取り組む「フードバンク事業」について
「フードバンク事業」の経緯
正仁会のフードバンクの取り組みは、先行する「あいあいねっと」の原田佳子代表の思いから始まりました。原田代表は、もともと正仁会が属している「にのみやグループ」の医療法人が経営する有床診療所で、管理栄養士として糖尿病等患者の栄養相談を担当していました。その際、料理が苦手な単身の男性や、年金暮らしで貧困の状況にある人等に助言しても健康的な食生活を送ることが難しいことを課題に感じていました。
また、十分に食べられるのに包装が少し破れている等のために廃棄されてしまう、“もったいない食材”が多くあることも気になっていました。
そこで、原田代表は「にのみやグループ」の代表で医師でもある二宮正則理事長や同法人 特別養護老人ホームなごみの郷 松林克典施設長に相談し、「食で地域社会を支える」ことを目的にした「NPO法人あいあいねっと」を2008年に立ちあげました。その後2018年から正仁会の公益事業として「フードバンク事業」に取り組んでいます。
取り組み内容
現在の「あいあいねっと フードバンク事業」は、食料等を無料提供してくれる「パートナー企業」70社と、要支援生活者支援団体80団体(社協や施設・事業所、こども食堂等)と協働した取り組みになっています。日々の活動は、ボランティアと週3回の食品の確認、仕分け、受け渡しや、毎週1回個人食料配布、月に1回、希望者に食品の詰め合わせを1袋ずつ渡す「フードパントリー」です。これらの支援対象者は、地域の民生委員・児童委員や、行政、社協からの案内で来られる、何らかの生活のしづらさを抱えている人たちです。
「フードパントリー」で食品を渡す際には、「体調はどうですか」等の声かけからコミュニケーションをとっています。また、受け渡し時のお楽しみの「お菓子のつかみ取り」では、笑い声や歓声があがります。
原田代表は「ボランティアの皆さんに、自分たちで考えて活動してもらうことが大事と考えています。『貧困』『食品ロス』という大きいテーマに取り組んでいますが、活動自体は楽しく、笑いが絶えません。ボランティアのAさんは、夫を亡くされ落ち込んでいたところ、ボランティア活動に参加するようになって元気を取り戻されました。さらに、食品を受け取った人が『私も何かできることがあれば』とボランティア活動を申し出る人もおられます。こうした関わる人の交流から、思わぬうれしい効果が生まれることがあります。また、食品を取りに来られ困った様子のBさんに声をかけてみると、DVで逃げて来られていることがわかりました。そこで直ちに『NPO法人反貧困ネットワーク広島』につなぎました。その後Bさんから『元気に働いています』と連絡があり、嬉しかったです。私たちの取り組みは『食の支援』で、できることは限られています。私たちの活動を通してキャッチした困りごとで、対応できないことは関係機関につなぎ、地域に暮らす住民一人ひとりがより主体的な生活を営めるよう取り組んでいきたいです」と話されました。
2.複数法人が協働する「広島さっそくネット」の活動について
正仁会では、大規模災害等が起き、単独法人では対応ができなくなった場合の備えとして、さっそくネットの取り組みもすすめています。さっそくネットは、所属するエリアの高齢・障害・保育等の種別を超えた施設・事業所と種別団体、本会で情報を共有し、支援が必要な施設・事業所へ物資を提供する相互支援のしくみです。平時の取り組みとして、安佐北区エリアでは、区内の施設・事業所を順に会場にして「エリア会議」を開催しています。それぞれの施設・事業所を訪問して立地とBCP(事業継続計画)を確認し、災害時に課題となりそうなことを共有しています。「この取り組みを通して顔の見える関係づくりを行い、被災した場合に想定される課題を知ったうえで互いに声を掛けられるようにしたい」と松林施設長は話されました。万一の際に、物資等の支援をスムーズに行うことで、施設・事業所の利用者や地域住民の暮らしを守る取り組みにつなげます。
3.社会福祉法人の「地域公益活動」の促進、拡充に向けて
広島県社会福祉協議会では、広島県社会福祉法人経営者協議会をはじめとした種別団体と協働して、地域の福祉ニーズに対応するため、近隣の複数の施設・事業所と社協がネットワークを組み、できることを考え、力を出し合い取り組んでいきます。
今後も、地域公益活動が県内各地ですすみ、住民の暮らしの安心感を高めていけるよう、先行する取り組み事例をお知らせします。
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