生活福祉資金貸付制度(緊急小口資金)と生活再建について
2024.05.10 掲載
本会が実施する生活福祉資金貸付制度には、低所得者世帯(障害者世帯、高齢者世帯)を対象とした緊急小口資金があります。この資金は、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に、少額の費用を貸付けることで、世帯の自立(生活の立て直し)を支援するものです。
緊急小口資金の貸付上限額は10万円で、申込から一週間程度で審査しています。貸付要件を満たす場合には、少しでも早く世帯の支援になるように速やかに送金を行っています。
令和5年度の貸付決定件数は、38件(うち1件は、令和6年能登半島地震による特例貸付)でした。何らかの事情を抱え、生活に行き詰まり、市町社会福祉協議会(以下、「市町社協」という)へ相談に訪れる人に対し、貸付を通じてどんな支援ができるのか、事例から伝えます。
日々の生活への備えと現実
日常生活を送るうえで、病気で働けなくなったり、勤務先の会社が倒産して急に失業したり、思わぬ災害にあったりと誰にでも予想外の事態が起こりえます。近年、こういった事態に備えるため「生活防衛資金」という言葉をよく聞くようになりました。「生活防衛資金」とは、一般的に生活費の3か月から半年分を指すことが多いようです。例えば、公的な傷病手当や失業給付であっても支給開始までに一定の時間を必要とするからです。
では、どの程度の世帯に備えができているのでしょうか。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」によると、貯金が一切ない「金融資産非保有世帯」は、単身世帯で34.5%、二人以上の世帯で23.1%となっています。もしも日々の生活を送るだけで精一杯、とても預貯金なんかできないという世帯が、何らかの事情で突然収入が途絶えてしまったら、生活を維持するために、また、生活を立て直すために、誰を(どこを)頼るのか、2つのケースを紹介します。
ケース1:初給与が出るまでの生活をつなぐ
Aさんは、高校を卒業してから30年余り、就職・退職と失業給付の受給を繰り返しながら、生計を立ててきました。主に工場などで働いてきましたが、過去に3度、失業給付を最大限受給した後、すぐに再就職できた経験があったため、今回の失業でも同じように就職できるものと考えていました。しかし、面接を受けても、なかなか就職に至りません。焦ったAさんは、ハローワークの職業相談員に仕事だけでなく、生活費についても不安があることを伝えたところ、社協に貸付制度があることを教えられ、相談に訪れました。
緊急小口資金の貸付要件のひとつに「初給与までのつなぎ」がありますが、仕事が決まっていることが条件であるため、このままでは申込みができません。説明を聞いたAさんは落胆しましたが、窓口の市町社協では別の提案も行いました。窓口社協は、生活困窮者自立支援法に基づく「就労支援事業」も行っており、地元の求職情報に精通しており、Aさんの職歴から紹介できそうな仕事に心あたりがありました。Aさんの就職が決まったのは、最初の相談から2週間が過ぎた頃でした。社協は、雇用条件を確認し、想定される手取り額の中で、Aさんが日常生活を送りながら、償還(返済)も見込めると考えて、Aさんと生活の自立に向けて緊急小口資金の申請手続きを進めました。
初給与までのつなぎの相談では、Aさんのように就職・転職を繰り返し、十分に預貯金ができず、生活に困るケースが多いです。不測の事態に備えるためには、まずは収入を増やすか支出を減らして貯えをつくっていくしかありません。緊急小口資金の申請手続きでは、直近3か月程度の収支状況を整理し、家計の見直しへの助言も行っています。
ケース2:医療費の支払いを優先して
Bさんは、年金と清掃のパート収入で生活しています。休日に外出先で転んで、足首を強くひねり一週間ほど入院しました。Bさんの仕事は階段の上り下りを伴うため、元のように働けるまで1か月近く仕事を休むしかありませんでした。Bさんが加入している国民健康保険には、傷病手当の制度はありません。また、仕事中のケガでもないため労災保険の対象にもなりません。年金だけでは生活ができず、パートを続けながら、少しずつ貯金をしていましたが、このケガによる医療費の支払いと休職中の生活費で、あっという間に貯蓄が無くなってしまいました。そのうえ、医療費の一部が未払いとなってしまいました。Bさんは、復職後の給与をまず医療費の支払いに充ててしまい、その結果、次の給料までの生活費が足りなくなって市役所に相談したところ、社協へつながれました。
緊急小口資金の貸付要件には「医療費を支払ったための生活費不足」があります。窓口社協では、Bさんが年金収入だけでは生活保護基準を下回っていますが、本人が働けるうちは働きたいと思っていること、当面は仕事が続けられそうなこと、貸付額は必要最低限の金額にするなどの整理を行い、償還も見込めることから、緊急小口資金の申請を行いました。
思わぬ病気やケガで医療費を支払ったため、生活ができないという相談は、高齢者世帯からの相談が多くあります。Bさんの場合、いずれ生活保護の申請が必要になるかもしれませんが、働ける限りは働いて生活したいという思いを尊重し、時に電話をかけて、現在の生活を見守っています。
災害時における被災者支援の一つとして
令和6年は能登半島地震のニュースで始まった年でした。
現在、能登半島地震災害で被災し、広島県へ避難した世帯に対し緊急小口資金の特例貸付(貸付上限額20万円)を行っています。
近年、平成23年の東日本大震災の被災世帯に関する特例貸付や平成28年の熊本地震の被災世帯に関する特例貸付、県内では平成30年豪雨の被災世帯に対する特例貸付を実施するなど、大規模な自然災害の際に、被災世帯に寄り添う支援を行ってきました。社協では、貸付を通じて民生委員や福祉事務所、生活困窮者自立支援機関等の関係機関とともに、借受世帯の生活支援にこれからも取り組んでいきます。
緊急小口資金の概要
貸付対象 | 緊急かつ一時的な生計の維持をするための貸付を必要とする低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯(日常生活上療養又は介護を要する高齢者が属する世帯に限る) |
貸付上限額 | 10万円以内(1,000円単位)※必要最小限の費用で、期限内で償還が見込める額 |
貸付利子 | 無利子(ただし、償還期限を過ぎると、元金残高に対して年3%の延滞利子が発生) |
連帯保証人 | 不要 |
据置期間 | 貸付日から2か月以内 |
償還期間 | 最長12か月以内 |
償還方法 | 償還計画に基づき、原則として、毎月26日(休業日の場合は翌営業日)に指定の金融機関口座から引き落とし |
お問合せ先
生活支援課
所在地:〒732-0816 広島市南区比治山本町12-2 県社会福祉会館1階
電話:082-254-3413(貸付担当)
082-567-4836(償還担当)
ファクス:082-252-2133
受付時間:平日8時30分~17時30分
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