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話し合いを重ね個々の職員に合うキャリア選択を後押し <広島県同胞援護財団 可部南静養園カルム>

2024.02.09 掲載

 本会社会福祉研修センター(以下、研修センター)が実施する社会福祉従事者研修を活用いただいている、社会福祉法人広島県同法援護財団 可部南静養園カルムにおける職員育成の取り組み等について、松田圭太施設長と岸田幹広副施設長にお話を伺いました。

社会福祉法人広島県同胞援護財団の概要

 社会福祉法人広島県同胞援護財団(本部広島市/以下、どうえん)は、戦中、戦後の人々が一番困窮した時代に福祉活動を始め、70年以上にわたる歴史があります。現在は高齢者施設、保育施設、母子生活支援施設、障がい者施設、児童福祉施設の15施設を運営しています。
 職員数は750人余りで、1年目の平均定着率は91%と高く、法人理念の『「真心」「信頼」「安心」』を支えるために、「ご利用者の満足」「地域の皆様の満足」「働く職員の満足」の3つの満足を提供する人財育成に力を入れています。「人財」の表記は、どうえんでは職員を財(たから)と考えているためです。
 令和2年3月には、働きやすい職場づくりに取り組む優良法人を認証する「魅力ある福祉・介護の職場宣言ひろしま制度」の「プラチナ認証法人」として認証を受けています。

法人の人財育成

 新任職員は、ビジネスマナー研修で、法人理念・ビジネスマナー・接遇・コミュニケーションなど、社会人・組織人として必要な内容を学びます。さらに施設見学研修では、法人が経営するすべての施設を見学して、法人内の事業の理解を深めます。また、新任職員から施設長まで、段階別でフォロー研修等を実施しています。
 法人全体の研修では、礼儀正しさや相手の立場に立って考えられる職員育成など、専門職である前に人として大切な部分を学び、それぞれの事業の専門性の研修は各施設で行われています。

高齢者福祉施設可部南静養園カルムの人財育成

職場内研修の実施

 年度当初に主任、リーダーが研修テーマを決定しています。過去には介護リフトや排せつ、パッド・おむつの当て方、ポジショニングなどを学びました。
 最近では、事故発生時の連絡方法についてクレームがあったことから、事故発生防止委員会より「伝え方に問題があるのではないか」と提言がありました。そのため、ユニットごとに「家族への電話連絡研修」を実施し、施設内で課題を共有しました。

OJT(個別指導プログラム)について

 新卒の新任職員にOJTを実施しています。施設長、副施設長、主任で指導の方向性を考え、主任、リーダーが中心となって、新任職員より少し先輩のOJT担当者を決め役割を伝えています。
 OJT担当者は、新任職員が不安なく働けるよう相談の役割を担い、技術面の指導は他の職員も行います。職員によって支援方法が異ならないようにマニュアルを整備していますが、それでも支援方法に違いが生じて、新任職員が迷うことがあります。このような時には、過去に同じような経験をしているOJT担当者が異なっている支援方法の理由と根拠を示すことで、新任職員も理解が深まり安心して業務を行うことができています。こうしたやり取りを積み重ねていくことで、必ず守らなければいけないことと、変えてもよいことがわかり、悩みが軽減されるため高い定着率につながっています。
 中途採用職員への指導・育成については、その職員の職歴や経験を踏まえて実施しています。

外部研修(OFF-JT)の受講について

 外部研修への受講者は、年度当初に届いた年間スケジュールで決定するほか、研修の開催案内が届いた時に施設長、副施設長、主任で選定します。新卒で入職しても福祉を専攻した職員や福祉以外を専攻した職員、他業種からの中途採用職員など背景が異なるため、利用者への関わり方などを見て、個々の職員の課題に合った研修の受講を考えています。
 結婚、出産、育児、介護等ライフステージは職員一人ひとり異なります。定期的な面談で、本人が話せる範囲内でどのように働きたいかを確認するとともに、職員一人ひとりが働きやすい環境の整備にできる限り努めるようにしています。ライフステージでキャリアアップが難しいと感じた場合は、直接本人に確認しています。今は一時的に家庭を優先したい人、キャリアアップをめざしたい人、一人ひとりとしっかり話をして、その人に合ったコースを選択できるようにしています。
 どうえんは人事考課制度を導入していますが、正規職員であれば、専門職コース、マネジメントコースがあります。私たちとしては、本人の希望と違うコースの方がより活躍できると思っても、本人は今の仕事しか知らないため、自分自身がどちらのコースを選択すればよいか悩む職員もいます。私たちが期待していることを事前に丁寧に伝えることで、少しでも気持ちが向いてくれれば研修受講がきっかけとなり、めざすコースが変わることもあります。研修は視野を広げ、今まで知らなかった考え方のおもしろさに気づくきっかけになればいいと思っています。
 そのためには普段から職員としっかり話ができているかが大切だと考えています。研修の直前になって話をしても本心を聞くことはできないので、定期的に話をしながら、本人の働きたい方向性を把握するようにしています。

 

令和5年度「社会福祉法人会計実務通信講座」を受講して 

 研修センター主催の、令和5年度から開講した「社会福祉法人会計実務通信講座」を2人の職員が受講しました。開講時の6月と閉講時の11月に対面講義、7月から10月まではテキストとワンポイント動画(1時間程度)で学び、1か月に1度、課題提出がありました。
 

武内 大喜リーダー事務員(勤続年数:6年)

 今年度から会計実務を担当することになったものの、会計のことをわかっていなかったので、ありがたいと思い受講しました。
 暗記ではなく理屈を教えてもらえたので、基礎のしくみを一から学ぶことができました。今まで受講した会計の研修の中で、一番わかりやすく初心者でも理解できました。毎月の課題の量も適当で、長い期間をかけて少しずつ理解できたことがよかったのかもしれません。
 また、会計実務を担当しているので、すぐに役に立ちました。基礎的な内容でしたが、押さえておかなければいけないことだったので、学んだ内容全般が普段の業務に活きていると感じました。

倉﨑 珠予事務員(勤続年数:9年)

 年齢的にも講座の内容が理解できないのではないかと不安でしたが、以前から会計に興味があったので受講を決意しました。
 実際に受講してみると、この講座は全くの初心者でもわかりやすかったです。また、会計の流れが理解できたので、小口現金管理など、自分が担っている業務の重要性に気づくことができました。

通信講座について

 いつでも課題に取り組めると思うと先延ばしにしてしまったり、他の業務が重なるとワンポイント動画の視聴が後回しになったりすることもありましたが、明るく親しみやすい雰囲気の三宅講師の動画は楽しく視聴できました。都合のよい時間に視聴できることや、わからない部分を繰り返し確認できたことがよかったです。また、解答用紙にコメント欄があり、疑問や感想など講師とやり取りができるようになっていて、疑問に対する回答や励ましのコメントがありました。

 解答用紙のコメント(取材者以外のコメントを含む)

松田施設長、岸田副施設長が感じた2人の変化

 以前、会計事務は法人本部で一括して行っていましたが、施設ごとに会計業務を行うことになり、施設内で会計を学んでいる職員が少なかったので、2人に受講を勧めました。
 2人とも今までは会計業務の一部分しか見えていませんでしたが、全体像がわかるようになったようです。自分たちの業務が何につながっているのかが理解できたのではないでしょうか。会計に興味を持ち、積極的に関わるようになりました。
 武内さんは講師の話し方や進め方がわかりやすく、自分が伝える立場になった時に理解できていなければ伝わらないと思うので、もっと学びたいと言ってくれました。
 倉崎さんは最初、経験のない自分に理解できるのだろうかと思いながら受講していましたが、側で見ていても、途中から不安感がなくなっていたので自信に変わったのだと感じました。

三宅由佳講師((一社)福祉経営管理実践研究会 副会長/三宅由佳税理士事務所 所長)からのメッセージ

 武内さん、倉崎さん、約半年間の受講本当にお疲れさまでした。日常業務に加え、学習時間を確保することは大変だったと思います。また、松田施設長、岸田副施設長には受講への理解を示していただいたことに感謝いたします。
 会計業務は利用者の方々に直接関わる業務ではなく、スキル習得の機会が少ない傾向にあります。しかし、会計情報は法人の経営業態を金銭的に表し、経営判断材料を経営陣に提供するものであるため、会計業務はとても重要な役割を担っています。お二人には本講座での学習習慣をぜひ続けていただき、今後も自信をもって、業務に取り組んでいただけたら嬉しいです。
 私はこの講座を通し、広島県内の法人の各会計担当者が一緒に学び、情報交換ができるコミュニティにもしていきたいとの夢を持っています。来年度もまた、新たな受講生の皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

取材に協力いただいた皆さま
(左から)岸田副施設長、松田施設長、武内リーダー事務員、倉崎事務員

 

研修センターに期待すること

 研修センター主催の研修は、高齢分野以外の障がい分野、児童・保育分野など、さまざまな法人の受講者とのつながりや交流を通して刺激を受け、多くの学びを得られることがメリットの一つです。
 「福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程」は、福祉・介護を専攻していない新任職員にも「福祉・介護のキャリアパスやキャリアプランを描けるようになってもらいたい」という私たちの強い思いからできる限り多くの職員に受講してもらっています。また、福祉・介護業界が未経験の中途採用職員は、今後のキャリアを描くことが難しいこともあるため、研修受講によりキャリアパスを考えるきっかけになっていると感じています。
 また、職員と面談した際に、対利用者ではなく職員間の連携について、「みんなが動いてくれない」「自分の気持ちを上手く伝えられない」等と難しさを感じていることが多くありました。そのため、対人関係の研修を重視しています。チームリーダー自身が円滑な関係づくりの手法や考え方を持つことにより、チーム内において良好な人間関係を築くことができると考えています。このような考え方ができる人にチームリーダーを任せたいと考えています。
 どの研修でも、まずは受講した職員が知識や技術を身につけることが第一段階です。そこから他の職員に拡がるかは、普段のコミュニケーションで丁寧に伝えることができているかどうかだと思います。コミュニケーションが丁寧に取れていないと、どんなに良い提案をしても浸透しないということが多くあります。知識や技術はもちろん大切ですが、組織やチームを強くするためには、良好な人間関係を構築し、同じ目標をめざしていくことが重要だと考えます。チームづくりで学んだことを試してみて、それが施設全体に拡がることを期待しています。

 研修センターでは、令和3、4年度の2年間はオンライン(ライブ配信、動画配信)で研修を実施していましたが、令和5年度は対面研修を再開し、通信講座にも新たに取り組みました。対面研修では受講者同士の活発な意見交換や交流が図られ、満足度の高い研修となっています。今後はオンライン研修と対面研修を併用し、受講しやすい研修の実施に努めます。

 

お問合せ先

社会福祉研修センター

所在地:〒732-0816 広島市南区比治山本町12-2 県社会福祉会館1階
電話:082-254-3460
ファクス:082-256-2228
受付時間:平日8時30分~17時30分
 ※土日祝日・年末年始(12月29日~1月3日)は、お問合せフォームで受け付けます。
 (返信には数日程度かかります)

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電話:082-254-3411(代表)
平日 8時30分~17時30分
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