誰もが居場所や役割をもつことのできるつながりづくり〈三原市久井町江木地区「もうもうカフェ」が育む豊かな関係性〉
2023.12.08 掲載
「地域共生社会」の実現に向け、福祉専門職には地域住民との連携、協働による多様な支援を展開することが求められており、早期発見・対応による予防的支援、支え合い活動による課題解決と見守り、地域住民と専門職の協働による課題解決が期待されています。既に各所でケア会議等が実施され、制度・サービス導入や地域活動を組み合わせた支援が行われています。一方で、なんらかの生活のしづらさを抱えているものの、制度のはざまにいる人たちや、本人や世帯からSOSが出されない場合、本人のみならず、近隣住民も“気がかり”を抱えたままくらしが営まれている現状もあります。
今回は、三原市久井町江木地区の生活者の声からうまれた「もうもうカフェ」に携わる人たちの思いと、その思いをつなぎ支えながらともに活動する社協職員の取り組みを紹介します。
1.生活者の気づきや地域への思いが集まった「もうもうカフェ」のオープン
江木地区の民生委員や見守りに携わっていた人達は、地域住民の生活の心配事に触れるなかで、どうしたら皆が楽しみや役割をもちながら安心してくらせるだろうか、という思いを持っていました。そのような中で令和2年に三原市が主催する「地域ビジョン策定会議」のワークショップが実施され、地域で生活する一人ひとりのくらしの変化や、江木地区で生活する自分たちのありたい姿など地域住民の思いを共有する機会となりました。ワークショップを契機に、「ふれあいサロンなど既にある取り組みではつながりにくかった退職後の男性や、出かける勇気があと一歩でない人も含め、誰もが集える場を作りたい」という思いに共感した人たちが集まり、コミュニティカフェの立ちあげに向けて地域が動き出しました。江木自治区の中に設置した「もうもうカフェ運営部会」で、立ちあげに向けた話し合いや、地元でみつけた会場のリフォーム作業等も経て、令和4年4月に「もうもうカフェ」がオープンしました。
2.地域の人たちのくらしに、“やりがい”や“つながり”が循環しはじめた
「調子はどう?」「野菜みんなが喜んでいたよ」「カフェに手作り品も飾ってみようか?」カフェがオープンしている時間やそれ以外の日常会話でも、様々なかたちでカフェに関わる人たちの言葉が飛び交います。ひとり暮らし高齢者など寂しさを感じていた人にとって“気にかけてくれる人がいる”“だれかの役にたちたい”といった、人とのつながりや役割を実感できる瞬間があふれ、年齢に関係なく「頼られること」「役割があること」の喜びや生活の張り合いが生まれています。
さらに、地域で見守り活動をする人たちは、生活上の不安や生きづらさを抱えた人たちが身近にいるのに、地域から孤立しがちなことも気がかりでした。専門職だけでなく地域の活動者も、何度もその人たちへ声をかけ続け、現在のカフェには多様な背景をもつ人が訪れるようになっています。同じ場所に集うことで緩やかにお互いを知ることができ、孤立しそうだった人への地域住民の受け止め方が変わったり、立場や生い立ちが異なる様々な人が地域へ溶け込もうとしていく変化が起こっています。
もうもうカフェ代表である佐倉さんは、「カフェの(ボランティア)スタッフは、色々な気づきや思いを持って皆さんと触れ合っています。“忙しい時や意見が折り合わない時のしんどさもあるけれど、それ以上にやりがいを感じる”と言ってくれる仲間と活動できることは嬉しいです」と語ります。そして、「カフェは誰もが立ち寄れる場所としてはもちろん、頼り頼られる関係ができ、楽しいことも心配事も皆で分かち合えるきっかけになっています。地域の思いが詰まったカフェの生い立ちや様子が認知されていけば、ちょっと困った時に地域の皆で支え合える可能性も大きくなります。住民にとって、困りごとがある時に相談窓口や会議室に出向くハードルは高いんです。カフェのような身近に立ち寄れる場所に専門職の人たちに来てもらえたら、地域でくらしを続けていく方法を一緒に考えられるのではないかと思います」と、専門職への期待も話されました。
3.地域の人たちの気づきや思いを受け止め、共感しあえる地域づくりをめざして
三原市社協久井地域センター福祉活動専門員の石田さんは、「地域の皆さんは、専門職が把握している以上に、同じ地域にいる人々のくらしぶりや気持ちを受け止めておられます。人とのつながりの中でこそ見える一人ひとりの姿も知っておられ、私も身近な人たちの気づきやつながりを大事に応援したいと思っています。さらに、地域には見守りボランティアやふれあいサロン、こども食堂等それぞれの強みをもつ団体があり、それらの活動者と関係を深めながら地域づくりに取り組んでいきたいです」と語ります。
生活課題が複雑・多様化する中で、地域に何らかの困りごとを抱えた人がいても、身近な人たちが自然に気づいて不安を分かちあい、誰もが居場所や役割をもつことのできるつながりづくりが求められています。久井町江木地区では「もうもうカフェ」の取り組みを通じて、地域住民と福祉専門職等がともに豊かな関係性をつくる援助に取り組んでいます。
本会においても、社協をはじめとした福祉専門職が、地域にくらす人と、何をみて・聞いて・つながって動いていけばいいのか、くらしの場で起こっていることを地域住民や関係者とともに受け止め話し合いながら、“共感しあえる”地域づくりをすすめていきます。
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