じっくり着実に職員のキャリアアップを支援~社会福祉法人くさのみ福祉会における人材育成の取り組み~(2022/2/10掲載)
2022.02.10 掲載
本会社会福祉研修センター(以下、研修センター)が実施する社会福祉従事者研修をご活用いただいている、社会福祉法人くさのみ福祉会の法人内における職員育成の取り組み等について、西村英子法人本部長(兼相談支援事業部長)と藤原理恵総務部長に伺いました。また、研修を受講いただいた感想等についても、4人の職員の方にお話を伺いました。
社会福祉法人くさのみ福祉会の概要
社会福祉法人くさのみ福祉会(廿日市市/以下、くさのみ福祉会)は、法人設立の8年前である1986(昭和61)年、小規模無認可作業所「くさのみ作業所」から始まり、現在は、通所事業やグループホーム事業、県児童発達支援センター等機能強化事業、児童発達支援センター・放課後等デイサービス事業、相談支援事業など、さまざまな事業を運営しています。
職員数は190人余りで、年代も20~70歳代まで幅広い層となっています。離職率は4.5%と非常に低く、法人のミッションの1つにもある「創造性にあふれた質の高い支援及び事業運営ができる職員集団づくり」をめざし、職員育成にも力を入れています。
なお、令和元年11月に、広島県福祉・介護人材確保等総合支援協議会が働きやすい職場づくりに取り組む優良法人を認証する「魅力ある福祉・介護の職場宣言ひろしま制度」の「プラチナ認証法人」として認証を受けています。
職員一人ひとりのスキルアップを支援するための「キャリアパス・ガイドライン」を策定
くさのみ福祉会では、福祉制度・動向が著しく変化する中、地域のニーズに応えるため、さまざまな事業を展開し、急激に職員が増えました。こうした中で、法人の継続的な運営・発展を見据え、長期的な視点での人材育成、人事考課制度の導入、研修体系の確立等、「しくみ」を整備する必要があると認識していました。
そこで、平成30年1月に、「人材育成プロジェクト」(管理職で構成)を設置し、月1回、専門家の指導・助言を受けながら、キャリアパス制度等の検討をすすめ、平成31年3月に、「キャリアパス・ガイドライン」を整備しました。
本ガイドラインでは、当法人の理念・ミッションを柱に掲げ、めざす職員像・大切にしたいことを整理項目立てし、当法人のキャリアパス(概念図)を明確化しました。また、キャリアアップ支援の職員研修体系と研修メニュー、職群役割資格等級制度(キャリアパス対応人事制度)を通じて職員のキャリアパスを適切かつ効果的に推進し、キャリアアップを促進するためのツールとして、チャレンジ自己管理(人事考課)制度を整備し、公平・適正な職員処遇の実現をめざしています。
めざす職員像等は、「めざす職員像検討委員会」をたちあげ、全職員(非正規職員も含む)にアンケートを実施してまとめました。時間もかかり大変な作業でしたが、全職員が関わってすすめたことに大きな意義を感じています。
チャレンジ自己管理制度は、現在、正規職員を対象として運用を行っています。正規職員の職群として、管理職群、専門職群、一般職群があり、職員一人ひとりの資格や経験等により職群と等級が決まり、それぞれの等級に合わせたチャレンジ自己管理シートがあります。シートを活用し、年間3回の職員と直属の主任・管理職との面談を通して、目標設定とその達成度の振返りを行います。
本ガイドライン作成当初から、人材育成の一環として、年3回の面談は行っていますが、給与等処遇に反映する人事考課を本格始動するのは、令和4年3月が初となります。最終的には評価を行いますが、法人としてめざしたいと考えているのは、法人の理念及びミッション、めざす職員像・大切にしたいことを前提に、独自の目標管理と人事考課を一体的に推進し、職員のキャリアアップの支援とキャリアパスに対応する職員処遇の適正な運用です。
目標設定や振返りを上司との面談を通して、職員自身の「チャレンジ」というキャリアアップの支援に重点を置いてすすめていきたいというのが一番の大きな思いです。
職員研修の取り組み~さまざまな機会・場を職員育成に活用~
年間研修計画を立て、全体集合研修、事業部・部門別集合研修及び派遣研修を実施しています。
コロナ禍における職場内研修をすすめるため、昨年度、国の補助金等を活用し、WEB会議システムを導入し、各事業所の職員が5つの拠点に分散して、オンライン研修を実施する等工夫をしています。
外部研修については、研修センターの他、行政や種別団体等の研修会に職員を派遣しています。週1回の部長会定例会議において、各事業所間で温度差がないように調整をしています。各事業所の判断で必要な研修に職員を受講させた場合も、部長会定例会議で必ず共有しています。
また、SDS(自己啓発支援制度)の一環として、250を超えるWeb講座がいつでもどこでも視聴可能な「障がい者支援施設向けオンライン職員研修 サポーターズ・カレッジ」を導入しました。15分程度の研修動画が多く、ちょっとした空き時間にスマホや自宅のPCで視聴できるため、職員へ周知・啓発文書を配付し、自己研鑽のために積極的な活用を促しています。WEB上で発行された受講証明書が管理者のメールアドレスに届くため、職員の受講状況等を把握できるしくみになっています。また、自己研鑽だけでなく、必要なテーマの研修動画を各事業所で視聴し、意見交換する等、職場内研修にも活用しています。
この他、「はつかいち福祉ねっと」(障害者総合支援法において各市町に設置する協議会)の存在が職員の学びの場として非常に大きいと感じています。協議会の事務局を当法人と他3法人が市から受託し、市内の障害福祉サービス事業所と行政機関(教育委員会を含む)等と日々、密に連携をとり、各専門部会において研修会やイベント等を企画・実施しています。定例会議や研修に職員を派遣したり、専門部会の部員として企画に携わる等、職員にとって、外部の人との協議の場は刺激になり、横のつながりをつくるとてもよい機会になっています。人材不足が深刻な状況の中、職員の負担も大きいからこそ、各事業所において「ここぞ」という学びの機会・場へ職員を派遣しています。
研修センター主催「福祉職員キャリアアップ研修【初任者・中堅職員・チームリーダーコース】」を積極的に活用
法人独自に階層別研修を企画・実施することが難しいため、しっかりとしたカリキュラムで構築されている研修センターの階層別の福祉職員キャリアアップ研修を活用しています。必要なキャリア年数に応じて段階を経て、計画的に受講させています。事前課題、キャリアデザインシート等への上司コメント欄は、本人のプラス面や強み、期待などを文章化(視覚化)し、職員に伝えることができるよい機会になっています。
また、このキャリアアップ研修に限っては、法人を支える組織の一員として中堅職員・チームリーダーを担っていくという意識づけとして報告会を意図的に実施しています。特に、中堅職員やチームリーダー等は今後法人運営を担う大切な職員であり、勤務時間と費用を使って研修を受講するため、受講した職員と管理職が一堂に会し、報告の場を設け成果を共有しています。職員の報告から、研修による成長を感じることができており、役職員の士気にもつながっています。
福祉職員キャリアアップ研修を受講いただいた職員の感想と上司コメントはこちら
今後取り組みたいこと
今後、法人の中で取り組みたいと思っているのが、現場における支援の質を高めるための実践報告会の実施です。利用者への支援の実践をまとめ、法人の中で共有し、お互いがアドバイスし合い、講師を依頼しスーパーバイズを受ける等、実践を深めていく場をつくっていきたいと考えています。
また、OJTは当法人の課題の一つと認識しています。チャレンジ自己管理制度の導入により、職員の状況やニーズ把握、対応(支援)等について、ようやく取り組み始めた段階です。新人職員のOJTについては、主任等がOJTリーダーを務め、一対一の個別の指導・支援を行っていますが、新人以外の職員の成長をサポートするためのOJTは、今後、アセスメントを行い、体系的な仕組みが必要だと感じています。業務の標準化のためのマニュアル整備等も進んでいないため、日常業務全般がOJTの機会であるという意識化、意図的な事務分掌、会議・研修運営等での工夫が必要だと考えています。
「キャリアパス・ガイドライン」を策定し、チャレンジ自己管理(人事考課)制度もまだまだこれからと感じるところもありますが、一つずつ着実に積みあげ、これからも職員育成に取り組んでいきたいと思っています。
くさのみ福祉会の管理職のみなさんです
令和元年11月、プラチナ認証法人の認証を受けました!
「プラチナ認証法人」のロゴマーク
お問合せ先
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