手間ひまかけて職員を大切に育てる <社会福祉法人三矢会における人材育成の取り組み>
2019.10.10 掲載
職員育成に力を入れている社会福祉法人三矢会に訪問し、内田健二理事長と太田川学園 第1成人部(アネックス棟)の茶木隆司副園長、森川理恵主任、大黒愛奈支援員にいろいろとお話を伺いました!
社会福祉法人三矢会の概要
社会福祉法人三矢会(広島市安佐南区、以下、三矢会)は、13施設、利用者340人余り、職員220人余りの法人で、知的障害のある人を対象とする障害者支援施設、障害福祉サービス事業等の経営を行っています。
また、役職員とともに、迷いのない、軸がぶれない経営をしたいという思いから、法人の理念をふまえ、平成28年度から第1次中期経営計画を、令和元年度から第2次の計画により、具体的な取り組み方針を共有されています。この将来ビジョンの柱の一つとして、職員一人ひとりが輝ける学園をめざし、良質な社会福祉人材の育成に取り組まれています。三矢会の職員構成は、男女比が5:5、雇用形態別では正規・非正規の割合が8:2、年代も20~70歳代まで幅広く、バランスのよい職員体制となっています。離職率は8%と低く、サービスの質向上のため職員の育成に力を入れています。
なお、本年7月に、広島県福祉・介護人材確保等総合支援協議会(以下、総合支援協議会)が職員にとって働きやすい職場づくりや業務改善等に取り組む優良法人を認証する「魅力ある福祉・介護の職場宣言ひろしま制度」の「プラチナ認証法人」として認証を受けています。
三矢会の職員育成の取り組み
三矢会では、園長・副園長、支援課長、主任、中堅職員、初任者の階層別人材育成計画、新規採用職員育成計画を作成し、年間の研修計画を立てています。外部研修を積極的に活用し、法人内研修にも力を入れ、新人教育、中堅層の底あげ教育、園長クラスの能力開発に取り組んでいます。法人全体で実施する研修は、全事業所共通のもので現場職員の声(提案)をもとにテーマを決め実施する他、毎年、他法人への視察研修なども行っています。また、事業所ごとの研修は、各所に企画実施を任せ、それぞれの状況に応じて必要な研修を行っています。
外部研修は主に本センターと総合支援協議会主催の研修を、その他行政等他団体の研修を併せて活用され、年間約55研修、延べ156人(平成30年度実績)を受講させています。また、外部研修では補えない内容(職員の共有課題等)を法人内で企画・実施し、年間約10研修、延べ526人(平成30年度実績)が参加しています。
そして、今一番、力を入れている層が主任クラス。OJTを意図的・計画的に行うため、主任クラスがスーパーバイザーとしての役割を発揮できるよう、多数の職員が本センター主催のスーパービジョン研修(基礎・実践全6回)を受講する等積極的に活用されています。
法人内外の研修の他、資格取得支援も手厚く、介護福祉士等の福祉関連の資格だけでなく、少し幅を広げて、法人で費用負担するなど後押しされています。
また、平成28年度にキャリアパス要件を整備し、厳しい勤務評定を、別に作成した階層別の評定項目に基づき行っています。これらの評定項目をキーワードで分かり易く示したものが、中期経営計画の中にも記載してある「望ましい職員像」です。理事長一人ではなく、各事業所の園長クラスとともに作りあげたもので、職員のキャリアアップの道筋として目標設定が描けるよう、職員全員に説明し周知されています。
職員一人ひとりの研修ニーズをしっかり把握
職員の研修ニーズ把握のため、理事長による全職員との面談(年1回)と、各事業所で園長による職員との面談(年2回)を実施しています。職員一人ひとりに合った目標を設定し、その目標の取り組み状況や本人の健康状態、家庭の事情、職場や仕事に対する要望等、仕事に必要な範囲内でじっくり聞き、職員の置かれている状況を把握し、必要なフォローをする体制があります。
また、異動希望調書(毎年12月)や、園長会(月2回)の機会を通じて必要な意見を把握する他、毎日、理事長自ら各事業所を見回り、普段から職員の話を直接聞くように心がけています。
さまざまなチャンネルにより、職員一人ひとりの研修ニーズはもちろん職員の経歴、家庭状況、研修の受講履歴や取得資格状況、経験年数等を一覧表で管理・把握しています。この一覧表は昇進・昇給等勤務評定の判断データとして活用する他、職員一人ひとりについて、充足できていないところはないか、優れたところはもっと伸ばして仕事に最大限生かすことができるよう、また、職員の自信につながるよう、必要な研修を積極的に受講させています。
本会主催の研修で一番印象に残っている研修~受講された職員の声~
茶木隆司副園長(勤務年数21年・他業種からの転職・副園長2年目)
研修名:スーパーバイザー養成研修(平成29年度受講・平成30年度実践報告者)
特に印象に残るキーワードは「他者の意見を否定的に受け止めない」。職場のメンバーがいろんな意見を言えるような雰囲気づくり・場づくりに取り組めました。学んだ手法を少しずつ現場で取り組むことで職場における自分自身の立ち位置がはっきりし、少し余裕ができました。また、グループワークでは他事業所での取り組みが非常に参考になり、受講者同士、人材育成の悩みなどを共有・共感でき、良いつながりができました。受講翌年度は実践報告者としても関わることができ、いい経験になりました。研修に出る以上は、しっかりと学びたいとの思いから、あえて司会等の役割をするようにしています。恥ずかしい気持ちもありますが、得るものが大きいため皆にも伝えていきたいです。
森川理恵主任(勤務年数15年・高齢福祉分野からの転職・主任3年目)
研修名:福祉職場のリーダー育成研修~久田流「リーダーシップ論」ぶれない上司・先輩になる~(総合支援協議会主催)/OJT推進研修(社会福祉研修センター主催)(いずれも令和元年度受講)
受講前は、自分に全く自信がなく、主任としてチームを引っ張っていくことや新人職員への伝え方にも悩んでいました。印象に残るキーワードは「職員は財産。メンバー個々の能力の見極めが大事」「研修受講で終わるのではなく、現場で行動を開始しないと何も起こらない」。受講後、理事長と副園長に報告・相談し、OJTの一環として、職員一人ひとりと向き合うため、新人職員との面談を提案し取り組むことができました。新人職員との面談では学んだ伝え方・接し方を活かすことができ、新人職員の思いや状況を確認することができ、しばらく見守ろうという気持ちになれました。研修受講をきっかけに面談という行動を起こすことができ、職員との接し方も大きく変わり、少し自信につながりました。
大黒愛奈支援員(勤務年数2年目)
研修名:福祉職員キャリアアップ研修(2日間・平成30年度受講)
いつも疑問や不安に感じたことを一人でため込んでしまうことがありました。グループワークを通して、年齢や分野・職種などさまざまな福祉職との話し合いは、自分が思い浮かばなかったような意見も出て、大変勉強になりました。意見を聞くこと、相談することの大切さを学び、受講後は、職場で疑問や不安に感じたらすぐに相談できるようになり、今まで以上にいい支援ができているのではないかと思っています。
職員育成・経営への熱い思い~内田健二理事長から~
利用者のみなさんが幸せな毎日を送っていただくためにも、支援する職員が安心して働けるような経営をしていきたいと考えています。第2次中期経営計画に掲げた「あきらめない・なげださない支援を目指して」は職員から出た言葉です。実現していくには難しいこともありますが、職員一人ひとりと向き合い、その思いを大事にし、職員が何か困ったことがあれば支え、ともに取り組んでいきたいと思っています。そのためにも、職員育成は覚悟を決めて、時間と費用をかけて取り組んでいます。
「プラチナ認証法人」のロゴマーク
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